証跡管理の基礎から実践まで!
内部統制強化とセキュリティ対策に不可欠な仕組みを解説します。

最終更新日:2025年11月13日


証跡管理の基礎から実践まで!内部統制強化とセキュリティ対策に不可欠な仕組みを解説します。

企業活動における不正防止やコンプライアンス強化が重視される現代、「証跡管理」の重要性がますます高まっています。特にIT化の進展やテレワークの普及により、情報セキュリティリスクが増大する中、適切な証跡管理体制の構築は企業にとって避けて通れない課題となっています。
しかし、「証跡管理とは具体的に何なのか」「どのように実践すれば良いのか」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、証跡管理の基本概念から実践方法、活用事例まで、分かりやすく詳しく解説します。内部統制の強化やセキュリティ対策に取り組む情報システム部門の担当者様や、上場準備中の企業の方々にとって参考になる内容をお届けします。

証跡管理とは

「証跡管理」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的な意味を理解している方は意外と少ないかもしれません。まずは、証跡管理の基本的な概念について解説します。
証跡管理とは、企業における業務プロセスやシステム操作、従業員の行動などが、あらかじめ規定されたルールに則って行われているかどうかを客観的に示すための証拠(証跡)を適切に収集・保存・管理することです。
簡単に言えば、「誰が・いつ・何を・どのように」行ったかという記録を残し、必要に応じて参照できるようにする仕組みです。企業活動のさまざまな局面で発生する操作や取引の記録を「証跡」として残すことで、内部統制の強化やセキュリティインシデント発生時の原因究明などに役立てることができます。
ITシステムにおける証跡管理では、システムログやアクセスログ、操作ログなどを収集・保存することが一般的です。例えば、「誰が」「いつ」「どのファイルにアクセスしたか」「どのような操作を行ったか」という情報を記録し、不正アクセスや情報漏洩などのリスクに備えます。

証跡と証憑の違い

証跡と似た言葉に「証憑(しょうひょう)」があります。どちらも企業活動における記録を指す言葉ですが、その意味や対象範囲には違いがあります。両者の違いを正しく理解することで、適切な管理体制を構築できます。
証跡(しょうせき)は、広義では「証拠となる痕跡」を意味し、ビジネスシーンにおいては「業務全般の適切性を示す証拠や記録のこと」を指します。ITシステムの操作ログや業務プロセスの記録など、広範囲にわたる記録が証跡に含まれます。
一方、証憑(しょうひょう)とは、主に取引の成立を証明する書類を指し、請求書や領収書、契約書などの金銭に関わる書類のほか、人事や労務に関する一部書類も該当します。
両者の最大の違いは対象範囲にあります。証跡は業務全般の適切性を証明するための記録であるのに対し、証憑は主に会計分野における取引に関する記録です。言い換えれば、証憑は証跡の一部とも言えます。
例えば、ある契約書が作成されるまでの過程で、誰がいつどのような承認を行ったかという記録は「証跡」に当たります。そして、最終的に締結された契約書自体は「証憑」となります。

項目 証跡(しょうせき) 証憑(しょうひょう)
意味 証拠となる痕跡 取引の成立を証明する書類
対象範囲 業務全般、システム操作、従業員の行動など 主に会計分野の取引に関する書類
具体例 システムログ、アクセス記録、承認履歴など 請求書、領収書、契約書など
関係性 証憑を含む広範囲な記録 証跡の一部

企業活動において健全性と透明性を確保するためには、証跡と証憑の両方を適切に管理することが重要です。特に内部統制の強化が求められる上場企業や上場準備中の企業にとっては、両者の違いを正しく理解し、それぞれに適した管理方法を採用することが不可欠です。

証跡管理の目的と重要性

証跡管理には、なぜ取り組む必要があるのでしょうか。ここでは、証跡管理の主な目的と重要性について解説します。
証跡管理の目的

不正防止・検知

証跡管理に取り組む最も重要な目的の一つが、不正行為の防止と検知です。従業員の業務内容やITシステムでの操作を記録することで、不正行為の抑止力となります。
例えば、機密情報にアクセスした記録が残ることを知っていれば、不正なアクセスを思いとどまる効果が期待できます。また、万が一不正が発生した場合でも、証跡を分析することで早期に検知し、迅速な対応が可能になります。
内部不正によるデータ流出や改ざんは、外部からのサイバー攻撃と同様に企業にとって大きなリスクです。適切な証跡管理体制を構築することで、内部関係者による不正行為のリスクを軽減することができます。

監査対応の効率化

会計監査やシステム監査など、さまざまな監査の際に証拠となる情報が「監査証跡」です。証跡管理に日常的に取り組んでいれば、監査の際にスムーズに必要な証拠を提示することができます。
特に上場企業や上場を目指す企業においては、内部統制報告制度(J-SOX)への対応が必要となります。この制度では、財務報告の信頼性を確保するための内部統制の有効性を評価・報告することが求められ、その評価の過程で多くの証跡が必要となります。証跡を適切に管理しておくことで、監査担当者が必要な情報を迅速に入手できるようになり、監査対応の工数削減にもつながります。また、監査での指摘事項も減少し、企業価値の向上にも寄与するでしょう。

情報資産の保護

企業が保有する顧客情報や機密情報などの情報資産は、適切に保護する必要があります。証跡管理により、「誰が・いつ・どの情報にアクセスしたか」を記録することで、情報資産の不正利用や漏洩のリスクを軽減できます。
例えば、特定の機密情報へのアクセス権を持つ従業員が、通常とは異なる時間帯や頻度でその情報にアクセスしている場合、証跡からその異常を検知し、潜在的なリスクを早期に発見することができます。
また、情報漏洩などのインシデントが発生した場合も、証跡を分析することで原因の特定や被害範囲の把握がスムーズになります。これにより、迅速な対応が可能となり、被害の拡大を最小限に抑えることができるでしょう。

証跡管理の重要性が高まっている背景

近年、なぜ証跡管理の重要性がこれほどまでに高まっているのでしょうか。ここでは、証跡管理の重要性が増している社会的・技術的背景について解説します。

IT化の進展

ビジネスのあらゆる場面でIT技術が活用されるようになり、企業活動の多くの部分がデジタル化されています。これに伴い、情報システムの利用範囲は拡大し、システム上で処理される情報量も増大しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、今後もこの傾向は加速すると予想されます。ITシステムの活用が増えるほど、システム上での不正行為や操作ミスのリスクも高まります。
こうした状況の中で、システム操作の記録を適切に残し、監視・分析する証跡管理の重要性はますます高まっています。特に、クラウドサービスやSaaS(Software as a Service)の利用が増えることで、従来のオンプレミス環境とは異なる証跡管理の手法も求められるようになっています。

テレワークの普及

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、テレワークが急速に普及しました。オフィス以外の場所から企業のシステムや情報にアクセスする機会が増えることで、情報セキュリティのリスクも高まっています。
テレワーク環境では、従業員の業務状況を直接監視することが難しくなります。そのため、「いつ・誰が・何をしたか」を記録する証跡管理の仕組みがより一層重要になっています。
また、テレワークではプライベート用の端末を業務に使用する「BYOD(Bring Your Own Device)」の導入も増えており、企業のデータが様々な環境で扱われるようになっています。こうした状況下では、情報漏洩のリスクを最小化するために、適切な証跡管理体制の構築が不可欠です。

コンプライアンスの強化

企業のコンプライアンスに対する社会的要請は年々強まっており、法令遵守の徹底や透明性の高い企業活動が求められています。
特に上場企業においては、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)への対応が求められ、財務報告の信頼性を確保するための内部統制の整備・運用状況を評価・報告する必要があります。
また、個人情報保護法の改正やGDPR(EU一般データ保護規則)の施行など、個人情報の取り扱いに関する規制も厳格化しており、これらの法規制に対応するためにも証跡管理は重要です。

参考:令和2年改正個人情報保護法 特集 |個人情報保護委員会 , EU(外国制度) |個人情報保護委員会

さらに、サイバーセキュリティ経営ガイドラインの改訂や、NIST(米国国立標準技術研究所)のセキュリティフレームワークなど、セキュリティに関するガイドラインでも証跡管理の重要性が指摘されています。

参考:National Institute of Standards and Technology

このように、さまざまな法規制やガイドラインの要件を満たすために、証跡管理の体制整備が不可欠となっているのです。

効果的な証跡管理の進め方

証跡管理の重要性は理解できても、具体的にどのように進めればよいのか悩む方も多いでしょう。効果的な証跡管理を実践するためのステップについて解説します。
効果的な証跡管理の進め方

管理対象の特定

まずは、証跡管理の対象となる業務プロセスやシステムを特定します。すべての業務やシステムを対象にするのではなく、重要度やリスクの高さに応じて優先順位を付けることが重要です。機密情報や個人情報を取り扱う業務、財務報告に関わる重要なプロセス、不正発生時の影響が大きい業務などから優先的に取り組むとよいでしょう。また、各対象について「誰が」「いつ」「どのデータに」「どのような操作をしたか」といった記録すべき情報を決定します。

証跡の収集方法の検討

次に、特定した対象から効率的に証跡を収集する方法を検討します。手動での記録は人的ミスのリスクが高く、運用負荷も大きいため、可能な限り自動化された仕組みを導入することが望ましいでしょう。ITシステムではログ収集ツールを活用して自動的にログを収集・集約する方法が一般的です。また、ワークフローシステムや文書管理システムの導入により、業務プロセスの証跡を自動的に記録することも可能です。ただし、すべてを一気にシステム化するのではなく、重要度の高いプロセスから段階的に対象を拡大していくアプローチが効果的です。

保管期間と保管方法

証跡データを保管する環境自体を守るためには、システム全体のバックアップも欠かせません。イメージベースでシステム全体を迅速に復元できる「ActiveImage Protector -RE」も、併せてご検討いただくと安心です。

【内部リンク】ActiveImageProtector -REの詳細はこちら

定期的な点検と分析

証跡を収集・保管するだけでなく、定期的に点検・分析することも重要です。定期的な点検により不正行為や異常な操作を早期に発見できます。また、あらかじめ設定したルールに違反する操作があった場合にアラートを発する仕組みや、長期間のログデータを分析して操作パターンの変化や異常を検出する方法も効果的です。点検・分析の結果、不審な操作や異常が発見された場合は速やかに原因を調査し、必要に応じて是正措置を講じましょう。また、定期的な点検結果を経営層や監査部門に報告することで、証跡管理の有効性を示すことができます。

証跡管理を効率化するツールとシステム

ここまで証跡管理の基本的な進め方について解説してきましたが、実際に効率的に証跡管理を行うためのツールやシステムについて紹介します。
証跡管理を効率化するツールとシステム

ログ管理ツール

ログ管理ツールは、ITシステムやネットワーク機器などから出力されるログを一元的に収集・保存・分析するためのツールです。様々なシステムからログを自動収集し、一元管理することで、必要に応じて効率的に検索・参照できます。また、定義したルールに違反するログが発生した場合に通知する機能や、分析結果をレポート形式で出力する機能も備えています。例えば特権IDの利用履歴を確認する場合、各サーバーのログを個別に確認するのではなく、ログ管理ツールで一括検索することで効率的に証跡を確認できます。特に多数のシステムを運用している企業では、ログ管理ツールの導入によって証跡管理の効率が大幅に向上します。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは業務プロセスの電子化・自動化を実現するシステムです。申請・承認などの業務フローをシステム化することで、「誰が・いつ・何を承認したか」といった証跡が自動的に記録されます。紙の申請書をデジタル化し、案件に応じた承認者を自動設定することで、申請の進捗状況をリアルタイムで確認できるようになります。経費精算や購買申請などの業務をワークフローシステムで電子化することで、承認プロセスの透明性が高まり、承認履歴という形で証跡が自動的に残ります。これにより内部統制の強化や監査対応の効率化につながります。特に上場企業や上場を目指す企業では、内部統制の観点からワークフローシステムの導入が有効です。

文書管理システム

文書管理システムは電子文書のライフサイクル全体を管理するシステムで、証跡管理の観点では文書へのアクセス履歴や変更履歴を記録する機能が特に重要です。紙文書の電子化や文書の変更履歴管理、アクセス権の細かな設定、操作ログの記録、保存期間管理などの機能があります。契約書や議事録などの重要文書を文書管理システムで管理することで、「誰が・いつ・どの文書を・どのように操作したか」という証跡を残せます。システム選定の際は電子帳簿保存法などの法令対応と操作の簡便さが重要です。使いづらいシステムだと従業員が別の方法で文書をやり取りしてしまい、証跡管理が徹底されないリスクがあります。

証跡管理の実践事例

まとめ

証跡管理は企業の内部統制強化やセキュリティ対策の重要な柱であり、IT化の進展やテレワークの普及、コンプライアンス強化により、その重要性は高まっています。効果的な証跡管理には対象特定から収集、保管、点検という一連のプロセスが重要で、適切なツール活用により効率化が図れることを理解し、組織に合った取り組みを進めましょう。

ログ管理を効率化するツールとしては、操作ログを詳細に取得できる、MylogStarのような製品を導入することで、証跡管理の自動化と監査対応の効率化が実現します。

この記事を書いた人

株式会社ラネクシー MylogStar担当者

20年以上にわたりログと向き合い、活用方法を模索し続けているMylogStarの製品担当。
新たな活用方法はないかどうか最新のトレンドにアンテナを張り、皆さまに役立つ情報をお届けします!

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